[h: はじめに]
個人的に好きな古典作品についてフリーダムに語ってみる。個人的嗜好、趣味、私見、偏見などなど満載でいくので、時には不快に感じられる内容もあるかもしれませんがご容赦ください。紹介する作品はその時の気分で決めてるので順番に特に意味はないです。
第一回はこちら。
[h: 将棋無双第四番 三代伊藤宗看]
創作を始めてまず古典を勉強しようと思って並べたのがこれ。なんで四番から始めたのかは今となっては謎。多分取っつきやすそうに見えたからだと思う。
無双は凄く難しいという話は知ってるので解く気は全くないのだが、すぐに答えを見るのもどうかと思うので一応少し考えてみる。初手は42龍か42馬、ひねって43桂くらいか。持駒に金銀があるなら73角のような退路封鎖の捨駒も手筋だけど、この場合は戦力不足で見るからに無理筋。常識的に考えて42龍か。対しては62玉の1手。
51角は71玉、53角や53馬は73玉で継続手が見えない。74桂73玉に51角や85桂を考えてみるがやはり攻めが続かない。初手42龍が違うなら42馬か43桂?尚更詰むように見えない。ダメだお手上げだ……答えを見よう。
【答え】42龍、62玉、51龍!
(;゚д゚)(つд⊂)ゴシゴシ(;゚Д゚)…?!
全く見えんかった……てかこの盤面戦力で龍捨てちゃうの?マジで?これで詰むの???
同玉、24角!
ガツンと音がしそうな凄い捨駒。重要そうな戦力だった龍と持駒の角を立て続けに捨ててしまう。初形からこの手順は全く想像できなかったけども、ここまで示されれば私でも意味はわかる。62玉なら35角と龍を取って詰ます腹積もりだ。44龍は35角を阻害する邪魔駒だったということか。もし24角を同龍と取れば、43桂62玉74桂73玉65桂で詰む。
龍の位置をずらした効果で65桂を打てる。気づいてみれば本作は35龍の守備力が玉方の生命線で、それさえなければ44龍も持駒の角も必要なく桂を連打するだけで詰んでしまう形だ。35龍の無力化を狙う24角の妙手、それを隠蔽する44龍の配置が実に巧妙だ。初形を見て盤面左上でごちゃごちゃやって詰ますものだという先入観を持ってしまうとこの手順は永遠に見えない。35龍の無力化という視点を持つことが必要なのだ。
33飛、43桂、62玉、35角、同飛
24角に対しては33飛合が上手い受けで、35角の龍取りに同飛を用意することで65桂を防いでいる。この図を初形から43桂62玉と進めた図と比べると、角を捨てて44龍を持駒に加えた勘定になっている。43桂に41玉とかヤボなことはやっちゃいけません。今度は持駒に飛車があるので手が続きます。
74桂、73玉、85桂、同香、83飛、同玉、93香成、同香、84銀、94玉、93銀成、95玉、96歩、同玉、97香まで25手詰
華々しい捨駒は将棋無双の醍醐味の一つ。将棋ウォーズならぬ詰将棋ウォーズがあったら物凄い爆音SEが鳴りそうな、そんな凄味を感じさせてくれる。後世の作品、例えば伊藤看寿の将棋図巧を並べていても、上手い捨駒に感心させられることはあっても凄味に圧倒される感覚はない。詰将棋の技術が発展した現代にあって、宗看のこの技術はロストテクノロジーだと思うんですよねぇ。この凄味は何に起因するんだろう?宗看は捨駒による不利感の落差の演出に長けていたということなんだろうか?
私ごときが天下の将棋無双に物申すのも何なのだが、配置で気になるところを突っついてみる。具体的には77歩だ。これは初手から42龍62玉53角73玉のときに74歩を打てなくさせるための配置と思われるが、詰みに働かない歩を置くくらいなら持駒の歩を削ればいいように見える。具体的には次のような感じだ。
42龍62玉51龍同玉24角33飛43桂62玉35角同飛74桂73玉85桂同香83飛同玉93香成同香84銀94玉93銀成95玉96香まで23手詰?
だがこれだと51龍捨てのときに73玉で困る。元の図なら51龍73玉に対しては62角同銀同龍同玉74桂51玉42銀61玉62歩以下詰む。
この変化のために1歩必要ということなのだろう。