好きな作品を独断と偏見と嗜好に基づいてフリーダムに語る第二弾。
今回はこちら。
[h: 将棋無双第六番 三代伊藤宗看]
将棋無双には目玉となるような妙手・妙手順が似通っている作品がいくつかある。これは宗看の個人的関心や好みによるものなのだろうか。ともかく、本作では将棋無双で頻出の妙手順が出てくる。拙い文章とセットで恐縮だがその妙技をぜひともご覧いただきたい。
早速手順を並べていこう。
最初は舞台作りといったところ。44角は作意でも変化でも取られるだけなので、現代の作家なら違う導入手順を考えると思われる。3手目44香に合駒は51馬〜54香以下。特に42銀合の変化はかなり深く手強い。ちなみに53馬捨てのところは53角打以下の余詰がある。36金をと金に置き換えれば解消されるのだが、もしかしたら金配置で演出したい逃れ順があったのかもしれない。
手を付けやすい局面になったので、ここで一旦手を止めて考えてみる。すぐ見える攻めは32飛成同玉41角だが、33玉43金24玉で失敗。香が邪魔で14角成とできない。そもそも14香がいなければ32飛成同玉12飛成で簡単だ。どうやら14香は飛車筋を遮る邪魔駒のようだ。32飛成がダメとなれば42角くらいしか継続手段がない。22玉の一手に12香成から成香を捨てれば14香を消去できそうだ。
邪魔駒の香を消去できたのはいいが、42角と打ってしまったせいで今度は角が邪魔駒になっている。角がいなければ32飛成以下の詰みなのだが。邪魔駒を消去するために新たな邪魔駒が発生する、というのが宗看がこの作品で表現したかったナラティブなのだと思う。この邪魔駒をいかに処理するのか、宗看の妙技をご覧いただきたい。
この追いすがるような大駒の連続捨てが将棋無双ではよく出てくる。本作は角捨ての回数が2回で、第60番などに比べると回数は控えめだ(第60番も好きな作品なのでいつか紹介したい)。しかし本作は不成の捨駒というのが素晴らしい。不成にする理由は見ての通り25歩を打歩詰にしないためだ。本作を初めて並べたときは一連の手順のインパクトに圧倒されたのを覚えている。角が邪魔駒になっているために、このようなインパクト抜群な手順が成立しているのだ。
あとは大駒が全て消えて爽快に収束する。
まで31手詰。角の妙技と爽快な収束がとにかく気持ち良い。将棋無双の他作品で見られるような深謀遠慮な伏線などはないが、手順の気持ち良さだけでご飯何杯もいけそうなくらい好きな作品だ。
改めて作意手順を通しで並べよう。
最後に配置の細かいところを調べてみよう。57とと81歩は作意や変化に関係しないので余詰消しの配置だ。81歩は一段目に飛車を成る手を消す意味と想像できるが、57とは一体何なのだろう。脊尾詰に聞いたら次のような手順を返してきた。
この作品に限った話ではないが、余詰検討を人力のみでやっていた時代に、このような順を逐一検討していた当時の人々は偉大だとつくづく思う。