#55 「平行世界」 補足(入れ子構造について)
#xv0t1u_k-o
10
2025/03/23
94
17
16
6
#31 「平行世界」 をご覧になった方はお気付きかと思いますが、創作の動機になったのは高木秀次作 「千早城」 であり、ご存知の通り以下の構造を持っています。
(紛れ1)カギを開けずに進むと収束不詰
(紛れ2)収束を詰ませるため51とを引く → 受方に金を渡すため金合(受方金先金歩)され打歩詰
(作意)51とを引くのに加え、3筋の歩を吊り上げておく → 金合されるが、金歩不利交換により打開できて詰む
一方 「平行世界」 は以下の通りで、 「千早城」 と同じ構造を持つことがお分かりいただけると思います。
(紛れ1)カギを開けずに進むと銀合(受方銀先銀歩)され打歩詰
(紛れ2)銀の打ち場所を空けるため24香を間接消去 → 受方に香を渡すため香合(受方香先香歩)されやはり打歩詰
(作意)24香の間接消去に加え、93馬を直接消去 → 盤面の51杏を取らずに合駒請求して香を回収し、収束の香合を防いで詰む
ここで重要なのは 「第1関門のカギを開けた時だけ第2関門が作動するのだが、これを詰ませるには第2関門の存在を予見し先回りしてカギを開けねばならない」 という点です。 『この詰2010』 における若島正さんによる 「千早城」 の詳細な解説では、これに関して 「ただ単に伏線を二つ張ったということではない。伏線どうしに論理的な関係性が存在するのだ。(中略)思考の時間が内に折りたたまれているという感覚、時間が直線的に流れていないという感覚」 と表現されています。両作に限らず、いわゆる伏線物の持つ時間的多層性を本稿では 「入れ子構造」 と呼ぶことにします。
カギを一つだけ持つ伏線物は、二重の入れ子構造。
「千早城」 「平行世界」 そして本図は、二つのカギに 「論理的な関係性が存在する」 三重の入れ子構造。
後回しになりましたが、今回お出しした本図の構造は以下の通りです。
(紛れ1)カギを開けずに進むと打歩詰
(紛れ2)馬を捨てて25地点を空ける → 受方に桂を渡すため桂合(受方桂先桂歩)されやはり打歩詰
(作意)25地点を空ける前に、受方75桂を跳ねさせて合駒地点を7段目から8段目に移動 → 桂合できず詰む
次回の新作は、以上の内容を踏まえております。あまり期待せずお待ち下さい。
つみき書店2022/10/1 改良図
『詰将棋つくってみた2022』 に収載済み
この2週間ほど、お題から離れて新作の作図に没入しておりました。そちらを発表する前に、補助線を一本引いておきたいと思います。
コメント(8)
盤上の狼
@ncqsyrnaob
2025/03/23 10:03
趣向作メインと思ったら、このような作品も作るのですね。
あまりに難解で研究しました。創意と違ったらすみません。個人研究感想。
想定偽手順①
52と引、54玉、55銀、45玉、89角、67歩合、同角、同桂成、
46歩、34玉、23銀不成、同とで打ち歩詰めにて逃れ。
なんでこうなった?
26馬で25を開ければよい(伏線①)でも、チャンスは、53にいるとき
だよね、44桂邪魔じゃん(伏線②)
想定偽手順②
52桂成、54玉、53成桂、同玉、26馬、同歩、52と引、54玉、
55銀、45玉、89角、67桂打合、同角、同桂成、37桂、34玉、
23銀不成、同とで打ち歩詰めにて逃れ。
なんでこうなった?
26馬をするため44桂消したら、その桂で67に桂合されて、
37に打ってみたら、25にも利きが効いて打ち歩詰になったんだけど。
作意省略
53桂を消す前に、65と~86銀として、87桂成(歩を渡すと早詰)としてから、53桂を消して、26馬~89角とすれば、桂は8段目に合駒できない(伏線③)から、78歩合以下、打ち歩詰にならず解決。
解答選手権でもよさそうな作品。
2
やよい
@scyuubyh7b
2025/03/23 10:51
2つの偽作意、まさに書かれている通りです。
あくまで作者の視点ですが、左辺の配置がいかにも見え見えで、解答選手権にはまだ難度が足りないか…という気がしています。
1
盤上の狼
@ncqsyrnaob
2025/03/23 11:22
To: やよい さん
このような作品は、作意と変化の共通化して駒が使えるかが難しいですよね。偽作意にはまっても、左の銀と桂はたらいてないよな、鍵があるはずってなりますからね。右辺は問題なし。やよいさんなら難しい伏線作作れそうです。
1
シナトラ
@taf36xgajk
2025/03/23 12:54
ちゃんと精査できていない状態でコメントしてしまい申し訳ありませんが、つくってみた発表図と比べると、(紛れ2)自体が追加されたという認識で良いのでしょうか。この広義不利合は原図に無い部分ですよね。
作品としては左辺のわざとらしさが確かに気になるものの、重層的な構造でお見事です。
1
やよい
@scyuubyh7b
2025/03/23 15:12
To: シナトラ さん
原図の紛れ1・2はいずれも初手から56歩44玉ときて、3手目45銀以下が紛れ1、3手目43成桂以下が紛れ2であり、三重の入れ子構造自体は備わっています(切り分け方が多少異なるだけ)。成桂配置を嫌って改良しただけですので、本質的には変わっていません。
0
テンコ
@er_56gcf7x
2025/03/23 17:13
昨日の詰工房で、やよいさんのメーカー作品の中から10数作をピックアップして、出席者の皆さんに紹介させてもらいました。
ただ時間が足りなくて、「平行世界」などは駆け足になってしまったので、あの面白さをきちんと伝えられたかどうか…。
次回の例会では、この「補足」も合わせて、しっかりプレゼンさせていただきますね。
後続の作品も楽しみにしてます(^^)/
1
シナトラ
@taf36xgajk
2025/03/23 18:26
To: やよい さん
勘違いしてました。
確かに構造は同じですね。
ありがとうございます。
1
やよい
@scyuubyh7b
2025/03/23 18:43
To: テンコ さん
詰工房でご紹介いただくとは恐縮で、ありがとうございます。詰将棋の猛者たちからいかなる評価を受けたものか、想像すると少し怖いです。次回作も例によって江戸時代のような代物で、楽しんでいただけるか今から戦々恐々ですが、よろしくお願いします。
1
コメントの投稿